拓斗くんは、「バイバーイ」と手を振っている。
「拓斗くん、お母さん元気いいね?」
「元気良すぎて困っちゃうんだよねー。とくにパパが」
「どうして?」
「元気があまりすぎてて色んなことしちゃうから、パパがそのシリヌグイするの」
「拓斗くん……尻拭いの意味知ってるの?」
「うん。後始末でしょ?」
 あっけらかんとした答えに唖然とした。
 こんなに小さいのにそんな難しい言葉知ってるんだ……。
 それにしても、元気があり余って何をしちゃうんだろう?
 それが気になりつつも、拓斗くんの学校での話を訊くのはとても楽しかった。
 学校の話をしていたかと思えば、突飛な話を振られる。
「ねぇ、お姉ちゃんは秋斗お兄ちゃんが好きなの?」
「えっ!?」
「あっ! とまどった! どうせ秋斗お兄ちゃんに押し切られちゃったんじゃないのー? ママが秋斗お兄ちゃんは格好いいから女の子は誰でも流されちゃうって言ってたもん」
 なんて答えたらいいのかな……。
「……流されて付き合っているわけではないと思います」
「えー!? じゃぁ、好きっ?」
 屈託のない顔で聞いてくる。
 それにコクリと頷くと、口を半開きにした拓斗くんがじっと私を見ていた。