海斗くんは「保険屋さん追加ね」と、桃華さんを連れてきた。
 着物姿の桃華さんは、部屋に入ってくるなり真っ直ぐ私のところまで来て何も言わずに抱きしめてくれた。
 それだけで涙が出る私はどうかしていると思う。
 ほのかに香るは桃の花――。
 たぶん、香袋。
 やわらかい香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
「翠葉が私たちを好きでいてくれるならいいの。翠葉は疑いたくて疑ってるわけじゃない。わかってるから……。三年かけて、と思っていたけどやめたわ」
 桃華さんは身体を離し、視線を合わせるとにこりと笑った。
「高校は三年間で終わるけど、友達が三年間で終わるわけじゃないもの。学校という場所を出ても友達だわ。そうでしょう?」
 私にはわからない。