「ツカサ……」
 助けて――。
「……なんとなく、翠のほうが負けそう」
「負けそう」ではなく、「負けてる」の。
 自分の心に勝てなかった。
 もし、もっと強い心があれば、今泣いている自分はいないと思う。
「翠の力じゃどんなに力を入れて握ったところで、携帯は壊れない。でも、逆に自分の力の作用で翠の手が壊れそう」
「……え?」
 なんの話だっただろうか、と思うのと同時に、力が入りすぎて自分でも外せそうになかった指を携帯から一本一本引き剥がされ、最後には携帯を取り上げられた。
「電源は入れておけ」
 嫌っ――。
 そうは思うのに、手を伸ばせなければ声も出せない。