何度目かのコール音のあと、留守番電話が作動した。
 アナウンスのあとに聞こえてきたのはツカサの声。
『翠、ゲストルームに入るから』
 メッセージはそれだけ。
 ただ声を聞いただけなのに、涙が零れる。
 ソファの影からリビングと廊下を隔てるドアを見ていると、そのドアが開きツカサが入ってきた。
「何泣いて――」
 何って、ツカサがタイミングよく現れるから。
 昨日から泣いているところばかりを見られていて、それだって嫌なはずなのに、どうしても涙は止らないし、ツカサの「手」が欲しくて仕方ない。
 ツカサが近くまで来ると、
「それ、電源入ってないんだけど」
 と、私の手にある携帯を指差した。