「クラスの人間は訊かないかもしれない。でも、俺は知りたいから訊くよ」
 ……意外だった。
 佐野くんは踏み込んでこない、訊いてくる人じゃないと思っていた。
 一学期だって、私と桃華さんと飛鳥ちゃん、海斗くんの間に何があっても内容まで訊いてくる人じゃなかったから。
 ――「訊かないでいいやとか知りたくないとかじゃなくってさ、そういうのって訊き出すことじゃないと思ってるから」
 佐野くんはそう言っていた。
「俺は人間不信にはならなかった。でも、あまり立ち入ったことを自分から訊くのはやめようと思ってた。俺は特待で藤宮に来ているし、また何かしら問題は起こると思ってたから。自分がされたくないことはしない。そのスタンスでいようと思ってた」
 そこで一度区切ると、足を止めて私に向き直った。