「泣いてはいないね……。さっきも言ったけど、そこまで怯えないで? 無理には絶対にしないから」
「あー! 秋斗お兄ちゃん、何お姫様泣かしてるのっ? 王子失格っ」
「違いますっ、泣かしたのは美波さん!」
「あら失礼ね。教育よっ、教育っ!」
 もーーーーーーっっっ。
「泣いてませんっ!」
 久しぶりに大声を出したらスカッとした。でも、肩で息をするくらいには疲れた。
 急に力が抜けて秋斗さんのほうに傾いてしまう。
「おっと……血が下がった?」
「いえ……力が抜けてしまっただけです」
「横になろう」
 と、体を横にしてくれた。
「美波さん、あまり変な入れ知恵しないでください。ある意味、そこは俺の楽しみなんで……」
「女性の先輩から教えなくちゃいけないこともあるのよ」
「……ま、実地は自分なんでいいですけど」
 ベッドを下りようとした秋斗さんのシャツを掴む。
「ん?」
「……あの、信じてますからね?」
「くっ、また牽制された。でも、大丈夫だよ。君に合わせる」
 そう言って部屋を出ていった。
「あら……あれはマジね」
 と、美波さんが頬杖を付い秋斗さんが出ていったドアのほうを見て言った。