翌朝も蒼兄の車で学校へ行く予定で八時に家を出た。
 今日も変わらず栞さんが「いってらっしゃい」と送り出してくれる。
 明けない夜はないという。
 その言葉は本当にそのとおりだな、と毎回のように思う。
 自分が学校へ行きたかろうが行きたくなかろうが、具合が悪かろうが悪くなかろうが、「時」は何に左右されることなく刻まれる。
「時」は留まる術を知らないし、留まることを許されない。
 エレベーターを待っていると、蒼兄に顔を覗き込まれた。
「怖いか?」
「少し……というか、本当は怖くなくて、すごく怖い。……なんて言ったらいいのかわからない」
 みんな大好きだし、本当は疑ってなんかいない。
 ただ、心が――心が勝手に怖がるだけ。