そんな海斗くんにびっくりしていると、空太くんが苦笑する。
「翠葉ちゃん、大丈夫。海斗はさ、お手柄を全部藤宮先輩に持っていかれてるのが嫌なだけ。ま、それは俺もなんだけどね」
「……まだ目ぇ充血してるし……。そんなに泣かされても『安心をくれる人』なんて言ってもらえるのが不思議でしょうがない」
 むくれた海斗くんはテーブルに突っ伏したまま、上目遣いで私を見た。
「朝の話は聞いたし、昼に空太から掻っ攫われたときの話も聞いた。そのあとの話聞かせてくれたら機嫌直す」
「あぁ、それはぜひ俺もお聞かせ願いたい。あんなに怯えていた翠葉ちゃんをどうやって懐柔したのかが謎すぎる」
 空太くんも海斗くんと同じようにテーブルに顎を乗せる。
 普通に考えたら、どう見てもお行儀がいいとはいえない状態なのだけど、どうしたことか、目の前に大型犬が二匹「伏せ」の状態で待機しているように見えて口もとが緩む。
「あ、笑った……」
 海斗くんに、ピッ、と指さされ、空太くんにも「ホントだ」と言われた。
 うん、大丈夫――私、笑える。
 海斗くん、空太くん、いっぱい話すから、だから聞いてくれる――?