「翠葉ちゃん、痛い……? 大丈夫?」
 空太くんに顔を覗き込まれ、自分が胸を押さえていることに気づく。
「あ、ううん。痛くないよ、大丈夫」
 そうじゃなくて、この「音」はなんなのだろう。
 頭に直接響くように、カチリ、と音が鳴ったのだ。
「あのさ、翠葉の抱えてる『怖いもの』を教えてよ。俺たちは漠然としかわからないから……。言うのも怖いのかもしれないけど、そこはちょっとがんばってよ。そしたら、俺たちは司とは違う方法でフォローするから」
 海斗くんがいつもの口調に戻った。
 私はツカサに話したようにひとつひとつを話す。
 決して中学の同級生と一緒だなんて思っていないというこだけはきちんと伝えたくて。
「ツカサは『幻影』って言ってた。確かにそのとおりで、人が違う、場所が違うってわかっているのに『学校』っていうだけで中学とシンクロしちゃうことがあるの。……海斗くんや桃華さん、飛鳥ちゃんに佐野くん、空太くんも、みんなそんな人じゃないってわかっているのに、自分が怖がっていることを知られたら、『なんだ、結局信じてもらえてないんだ』って離れていっちゃったりするのかなって、そういうこと考えると止らなくて……」