光のもとでⅠ

「でもね、怖いって思っちゃうの。いくら『今』を見ようとしても、中学のときと違う宝物をたくさん見つけても、何度上から色を塗りなおしても、下にある色が浮き上がってきちゃうの――」
 発せられる声は小さいのに、どうしようもできない、と
叫んでいるように聞こえた。
 助けて、と……。
 わかってる、自分でもどうにもできなくて、だからずっと葛藤しているのはわかってる。
「それ、手伝うから……」
「え……?」
「条件反射――」
 翠は涙の溜まった目で俺を見上げる。
「パブロフの犬。翠は犬になればいい。もしくは、恐ろしく品質の悪い機械。俺が何度でも上書きしてやる。壊れるたびにリカバリーしてやる。保障期間は俺が死ぬまで半永久的に」
 目の表面張力決壊。
 涙が長い睫を濡らした。