「蒼兄、なんでそんなこと……」
「翠が泣いたからじゃない? 泣かせるようなことをしたのが俺だから。さらには、御園生さんが登校拒否を懸念するようなことを翠が口走ったんじゃないの?」
「…………」
「それは肯定?」
「…………」
 どうやら心当たりはあるらしい。
「ひとつ訊きたい」
 翠は不安そうな顔で俺を見上げた。
 こんな顔、今日何度目かもう忘れた。
「翠は中学のときに登校拒否をしてたわけ?」
 そんな話は聞いていない。
 海斗も言っていなかった。
 翠は話すならすべてを話すだろう。
 都合の悪いところだけをごまかして話すなんて、そんな器用なことはできない。
 だから、登校拒否はしていない。
 訊いたのは、ただの確認のため。