「どうして……」
 また翠の足が止まりそうだったから、それを阻止すべく軽く手を引いた。
「どうしてって何が?」
 半身ほど後ろを歩く翠を振り返ると、
「どうしてそこまでしてくれるの?」
 ここで、「好きだから」と言ったらどんな顔をするのか……。
 今、翠の頭はそんなことを考える余裕はないし、「そういう意味」に取ってもらえないのがオチだ。
「翠がなかなか理解しないから。……苦手分野はとっとと克服しろ」
「…………」
 ……黙るなよな。
「今朝のことが原因、もしくは誘引で、翠が登校拒否になったら困るんだ」
「え……?」
「そしたら俺は翠に会わせてもらえなくなるらしいから」
「どうして……?」
「病院まで付き添う権利をもらうとき、御園生さんにそう言われた。だから、登校拒否は困る」