「じゃ、強制で」
 翠の右手は氷のように冷たかった。
 こいつの手は夏も冬も関係なく冷たいのだろうか。
 点滴を受けているときと冬だけなら「変温動物」とでも言ってやるつもりだったのに。
 あぁ、極度の緊張からも手が冷たくなるって言ってたっけ……。
 今はそっちなのかもな。
「翠……この手はいつもつながれてるわけじゃないけど、俺は何があっても翠をひとりにするつもりも置いてくるもりも離れるつもりもない」
 俺がしてやれることは限られている。
 態度で示す方法なんてそうたくさんあるわけじゃない。
 正確には、こっちが態度で示しているつもりでも、この手負いの小動物にはなかなか伝わらない。
 いや、それも違うか……。
 実際、伝わっていないわけじゃない。
 ただ、それだけじゃ足りないだけ。