光のもとでⅠ

「それは嬉しいかな。……そういえば、今日はシャンプーの香りしかしなけど、いつも何かつけてるよね?」
「え……香り、きつかったですか? 寝る前に一吹きしかしないんですけど……」
「いや、至近距離じゃないとわからないくらいだったけど……」
 言われてまた顔が熱くなる。
「入院していたとき、消毒薬の匂いが嫌で……。看護師さんがくれた香水を愛用してるんです。エラミカオのユージンゴールド――」
「あの香り、好き。フルーツとフローラルの香りがバランス良くて翠葉ちゃんに合ってるよ」
 そんなふうに言われると嬉しい。
 頬が緩むと、「落ち着いたかな?」と声をかけられた。
 はっとして顔を上げると、とても優しい顔をした秋斗さんが私を見ていた。
「……はい」
「不安なことはひとりで抱えなくていいから。話してくれさえすれば今みたいにすぐに解決してあげられることもある」
「でも、それは甘えすぎじゃないですか?」
「……あのさ、俺は甘えてほしいんだけど?」
「……でも、それは怖いです」
「どうして?」
「……だって、秋斗さんがいなくなって自分ひとりで立てなくなったら困るもの……」
「どうして俺がいなくなることが前提かな……。そんなこと考えなくていいよ」
「それでも、不安なんです……」
「大丈夫だよ。毎日だって好きだ愛してるって伝える。毎日伝えても伝えきれいないくらいだ」