それで自分だけは翠のテリトリーに入る。
 その他大勢はどうでもいい。
 でも、こういう場で御園生さん以外の人間に守られること自体は、翠にとってはいいことなのかもしれない。
 一経験として。

 一限が終わってから御園生さんに電話をした。
『司……』
 張りのない声が携帯から聞こえてきた。
「今、大丈夫ですか?」
『大丈夫だよ』
 御園生さんには珍しく、棘を含む声だった。
 まぁ、それもそうか……。
 翠のあの顔じゃ、かなり泣いたんだろうということは想像に易い。