何がどうしてかは知らないが、どうやら今朝のやり取りを高崎兄弟に聞かれていたらしいことはわかった。
 そして翠が、俺が言ったことの大半を覚えていなかったことも。
 よりによって、「虫唾が走る」しか覚えてないってずいぶんだと思うんだけど……。
 おまえの頭、そこまで鶏頭だったか?
 高崎も驚いていたけど、俺だってびっくりだ。
 さらには、なんで俺がこんな柱の影に隠れて立ち聞きしなくちゃいけないのか……。
 バカらしくなってふたりの前に出た。
 先に気づいたのは高崎。
 翠は立ち上がった拍子にこちら側に背を向けたため、まだ俺には気づいていない。
 高崎の視線に気づいたのか、翠が振り返る。
「ツ、カサ……」
 それ以降は絶句。