翠を置き去りにしてマンションを出た。
 ロータリーに停まる車の窓を軽く二回叩く。と、すぐに窓が開き、「翠葉は?」と訊かれる。
「置いてきました」
「は?」
「あと一、二分して出てこなかったら要救助ってことで」
「何それ」
「宣戦布告という名の爆弾投下」
 運転席に座る御園生さんは、「はぁ」とため息をついてハンドルにうな垂れた。
「司の爆弾って破壊力ありそうだよな」
「一晩考えた程度のものです」
「十分だろ? 翠葉、泣かしたのか?」
「言い逃げしてきたのでどうだか……。じゃ、あとは頼みます」