「翠葉ちゃんはさ、クラスに入るときまず何を見る?」
 翠葉ちゃんはちょっと目を見開いた。
 まるで訊かれると思っていなかったことを訊かれて驚いているふう。
 こういう仕草ひとつひとつがなんだかかわいい子。
 でも、返ってくる答えは予想もつかないものばかりだったりする。
「……ひとつも欠けることなくきれいに並んでる机」
 その意味を少しだけ考えて、すぐにやめた。
 彼女に同調したらダメだ。
「俺は真先に翠葉ちゃんの席を見るよ」
「……どうして?」
 驚いた顔で俺を見上げる。