光のもとでⅠ

 ……俺には何ができるかな。
 言葉は気休めにしかならない。
 それでも俺は言う。
「大丈夫だよ」って。
 翠葉ちゃんは歩く足を止めて俺の顔を見ては、また下を向く。
 時計は二十五分を指していた。
 あと五分で教室にたどり着かなくてはいけない。
 ふと自分のクラスを見上げれば、ちょうどいい人間たちが窓際に集っていた。
 君たち、ナイスタイミング!
「だって、あそこ見てみて?」
 彼女がどこを見ればいいのかをわかるように指で指し示す。
 彼女が顔を上げたとき、飛鳥の大声が降ってきた。
「翠葉も空太もおっそーいっ!」
 身を乗り出す飛鳥を海斗が押さえにかかっている。
 その左隣で七倉が、「早く早く」と手を振っていた。