けど、彼女の中には色々と複雑な思いがたくさんあって、だから知られたくなかったんだ。
「……ツカサに『俺たちを侮るな』って言われた。『中学の人間と一緒にするな。考えただけでも虫唾が走る』って……。『俺たち』ってツカサのほかにあと誰っっっ!? 桃華さんも気づいていたらどうしようっ!? 海斗くんや飛鳥ちゃんも気づいていたらどうしようっ!? 別に同じだなんて思ってるわけじゃないのっ、違うのっっっ」
 彼女の嗚咽までもが聞こえてくる。
 体育座りをしている自分の膝にポタリ、と水滴が落ちた。
 次の瞬間には自分の頭に兄ちゃんの手が乗る。
「空太が優しい子で兄ちゃんは嬉しいぞ」
 立ち上がると、兄ちゃんは洗面所に入った。
 水の音がしたかと思うと、戻ってきたときに手にタオルをふたつ持っていた。