秋斗さんは、「今はね」と満足そうに笑って同じ動作を繰り返す。
 ちょっと我慢できなくて、自分の手で秋斗さんの手を掴み制止した。
「そうやって止めてくれたらやめるよ。……君が自分から俺に触れてくれたのは三回目かな」
「え……?」
「熱を出している俺の額に触れてくれたときと藤山。そして今。その三回だけだ。あぁ、エスコートはカウントに入れてないよ。あれは俺が先に手を差し出してるからね」
 そんなこと、考えたこともなければ気にしたこともなかった。
「好きな子に触れることができるのはすごく嬉しいし、逆に触れてもらえることだって嬉しい。俺はまだ三回しか触れてもらってないけどね」
 そういうものなの……?
「……少しずつ知って?」
 秋斗さんの目は切なそうに見えた。
 そんな目をさせているのが自分なのかと思えば、「はい」という答え以外は見つからない。
「ありがとう」
 と、また額にキスをされた。
 離れると同時に立ち上がり、
「お昼にしよう。苺タルトを買ってきたから待ってて」
 と、寝室を出ていった。