マンションに入ると、フロントにいたコンシェルジュが俺たちに気づき、カウンター内に用意されていた大きな包みを持ってきた。
「司様、翠葉お嬢様、おかえりなさいませ。翠葉お嬢様、こちらは若槻様からお届けものです」
「ありがとうございます」
 翠は首を傾げながら包みを受け取り両腕に抱える。
 大きさ的にはクッションよりやや大きいくらいだが、持ち手がないため大変持ちづらそうに見える。
「持つけど?」
「これくらいなら大丈夫。大きいけど重くはないの」
 確かに重そうではないが……。
「そっち持つから……」
 俺は翠の手から強引にかばんを取り上げエレベーターホールへ向かった。
「大丈夫なのに……」
 翠は口を尖らせていたが、エレベーターに乗るときには「ありがとう」と笑顔を見せた。
 ゲストルーム前で別れ十階へ移動すると、海斗が秋兄の家から出てきたところだった。