今はそういうツールがないからこそ、ことあるごとに翠に訊くしかなくて……。
 もしかしたら、小姑のように思われているのかもしれない。
「もう一度、俺の携帯にバイタルの転送してもらえるように――」
 最後まで言い終わらないうちに、「それはだめ」と笑顔で言われる。
 間違いなく作り笑顔。
 下手くそ――。
「そんな眉間にしわを寄せてもだめ」
「なんで」
「ツカサが第二の蒼兄になっちゃうから」
 今の俺ってそんなふうに見えるのか?
「……帰ろう?」
 歩くのを再開した翠は、俺を追い越したところで躓いた。
 翠の二歩は俺の一歩。
「ドジ……」
 手を差し出せば少し恥かしそうに笑い、「ありがとう」と手を重ねる。