光のもとでⅠ

「微熱は続いてるけど、まだ大丈夫……」
 そう言って視線を足元に落とす。
 翠はバカだ……。すごくバカだと思う。
 前髪が伸びて左サイドに流すようになってから、妙に叩きやすそうな額だとは思っていた。
 そこを目がけて手を伸ばす。
 ぺし、といい音がすると翠が顔を上げた。
「まだ大丈夫なうちに対処が必要だって、いつになったら学習する?」
「……どうせ万年首位の人には敵いませんっ」
「そういう問題じゃないだろ……。翠はもっと自分の身体の扱い方を学ぶべきだし、もっと大切に扱うべきだ」
 なんていうか、こんな反撃が返ってくるとは思っていなかった。
 しかも、それ……かなり的外れだし。
「……ツカサ」
 隣を歩いていたはずの翠の声が後方から聞こえてきた。