「ウェイトがかかっていいならいい」
 答えると、視界の端に少し首を捻った翠が入り込む。
 翠が「代わります」と言うと、
「じゃ、お言葉に甘えて……。こことかここにある数字、これが材料調達申請時の金額よりも下回っていて、超過申請になってるケース。それらの金額を片っ端から集めていって、どのくらいの額になるのか。それから、それをどこに充当するのかを考える作業なんだけど、エクセルのここに数値を入れていくと勝手に計上してくれるから。……大丈夫そう?」
 どうせならショートカットキーの使い方くらい少し教えてやれ、とは思うものの、慣れない操作までさせてデータが狂うよりはマウスで無駄な動きをしてもらったほうがいいのかもしれない。
「はい、大丈夫です」
「わからないことがあったら――」
「俺に訊け」
 おまえ、嵐の勉強を見ていて今の状況に至ったことを忘れてないか?
 これで翠までおまえにわからないことを聞いていたら、今度こそ何もできなくなるだろ。