「はぁ、寝てますか……寝てますね……」
 ベッドの端に腰掛け、無防備に寝顔を晒す彼女を眺める。
 布団に広がる長い髪や露になった頬、いちいち俺をそそるそれらが愛おしくも憎らしい。
 彼女の手元には携帯があった。
 蒼樹たちに電話でもしたか? もしくは逆……?
 ……ほかにも選択肢はあるか。
 司にかけていてもおかしくない。
 それを枕元に置こうと手にとると、無表示だったディスプレイに明かりが点る。
 ディスプレイを目にして息が止まるかと思った。
 通話記録のフォルダ名は「司1~10」の文字。
 中身を確認しなくてもわかる。
 まさか、あれを司から教わっているとは思わなかった。