「でも……最後、コレ、彼女に当たってたと思うんだけど……」
 不自然に思われないよう、できるだけ早く彼女から離れたつもりだけれど、彼女は何も気づかなかっただろうか。
 昼間に抱きしめたときにも思った。
 彼女が気にするように、俺もまた彼女の香りを気にしている。
 妖艶さとはかけ離れたそれは、俺にはとても新鮮な香りで、弱く香るからこそもっと――と近づきたくなる。
 バスタブに湯を張りながらそんなことを考え、さらには男の欲をきれいサッパリ吐き出す。
 上下水道完備に感謝感激雨あられ。

 腕の中におさまる彼女を思い出していた。
 それは自然と藤山での出来事を思い出させる。
 もっとキスの甘さを教え込めば良かっただろうか。