スーツを脱ぎ、さっきとは違うものに着替える。
 本当は明日着ようと思っていたものだけど、別にそれが前後したところでとくに問題はない。
 白いシャツにチノパン。その上にVネックのカーディガンを羽織る。
 気合をいれているわけでもなければ、お洒落している要素はどこにもない。
 いつも学校で白衣の下に着ているものと変わらない服装。
 彼女はそんな俺をじっと見ていた。
「カーディガンは普段着ていないけど、翠葉ちゃんと一緒にいるときはたいていがこの服装。中のシャツがその日によって変わるくらい」
「あ」って顔をしてから少し間を置いて、
「秋斗さんは思い出してほしいんですね」
 その答えは今しがた、明確に出た。