『きれいな景色が目の前にあるのに、撮れないんだとさ』
「スランプ……?」
『ははっ! そんな大そうなものじゃないよ。翠葉は『仕事』っていわれて写真を撮ったことなんてないんだ。だから、写真を撮る前に『仕事』ってものを意識しすぎてるだけ。スランプよりはプレッシャーかな? それと、記憶がないってことが相当なストレスになってるんだろうね。――あぁ、秋斗くんを責めてるわけじゃないよ? 言っとくけど、俺、ネチネチ派じゃなくて、その場でザックリ派だから。もともと君のせいだなんて思ってないしね』
 さっき記憶に関する話をしたからこんなことになっているのか?
 それとも、俺が写真のことを指摘したからなのか?
「さっき、記憶に関する話を少ししました。そのあと、なかなかカメラを手にしない彼女に写真を撮りに行かないのかと勧めたのは自分です」
『だからさ、それが何? 悪いことじゃないでしょ? 別に思い出せと言ったわけではないだろうし、仕事なんだから写真を撮れと言ったわけでもない。違う?』
「はい、ですが……その話題を出されるだけでもストレスになる可能性は――」
 言葉を遮られた。