「でも、それは司先輩に話したわけじゃないです……。雅さんと会ったのもそうだし、具合が悪いのもそうだし……」
 実際にそうなのだ。
 雅さんの件はその場を発見されてばれてしまった。具合が悪いのは隠しようがないところを発見されているから。
 甘えるというのはよくわからないけれど、相談を持ちかける、というよりはうまく聞き出されている感じ。
「司先輩が聞き出すのが上手だったりするだけだと思います……」
「それでも妬ける。これからは俺に話してくれない? 訊き出すのはそんなに不得手じゃないはずだし、何より君は無防備だからね」
「っ…………」
「でもね、訊き出すよりは翠葉ちゃんから話してもらいたいんだ。甘えてほしいんだよね。それが俺の希望願望欲望その一」
「……善処します」
 そんな話をしているところにコーヒーを持った蒼兄たちがやってきた。
「湊先生、栞さん、さっきはごめんなさい」
「どうしようもないときってあるものよ」
 そう言ってくれたのは湊先生で、栞さんは「気にしないで」と笑ってくれた。
 場が和やかな雰囲気になると、
「ものは相談なんだけど」
 と、秋斗さんが切り出した。
 みんなが秋斗さんを見ると、
「日中、翠葉ちゃんをうちで預かっていい?」
 と、なんでもないことのように提案した。