記憶が戻ったら――そしたら改めて訊くから……。
 そのときにはきちんと考えてひとつの答えを導き出してほしい。
「思い出すことに対して恐怖心は?」
 本当はどう思ってる?
「……ないと言ったら嘘になります。起きた出来事は全部教えてもらったけど、人から聞くのと自分が思い出すのは違うと思うから」
 途端に表情が硬くなる。
 でも、やっぱり思い出したほうがいいんだ。
 それは周りの人間が、というものではなく、君自身が……。
「翠葉ちゃん、立場は違うけど……その記憶を共有した者として、一緒に受け止めるから、だから――」
「だから」の先が続けられない。
「逃げないで欲しい」なんて俺が言っていいのかわからなくて。
 怖いのは俺も同じだ。
 でも、それでも思い出してくれることを望む。