次の瞬間、ふわ、と空気が動いたかと思うと、すぐそこに翠葉ちゃんがいた。
「――っ、翠葉ちゃん?」
彼女はソファの前に敷いてあるラグの上に座り込み、俺の袖を遠慮気味に掴んでいた。
「たくさんお話しましょう? 私にできることは何もないか、だから……」
下から見上げられ、そう言われた。
どうしてこの子はこんなにも優しいのだろうか。
どうして人に対して優しくあれるんだろうか。
いい子すぎて、時々怖くなる。
いつか、人に対する優しさで自分を壊してしまう気がして――。
「秋斗さんは秋斗さんらしくいてください」
「……俺が俺らしくいると翠葉ちゃんが困ると思うんだけど」
俺らしいというのは、たぶん好き勝手やるっていうことのような気がする。
それ以外が思い浮かばないんだから、俺という人間は中身のない人間なのだろう。
「……では、私が記憶をなくす前の秋斗さんは私にどう接していたんですか? 私は、秋斗さんらしくない秋斗さんを好きになったんですか?」
正直、なんともいえない。
「――っ、翠葉ちゃん?」
彼女はソファの前に敷いてあるラグの上に座り込み、俺の袖を遠慮気味に掴んでいた。
「たくさんお話しましょう? 私にできることは何もないか、だから……」
下から見上げられ、そう言われた。
どうしてこの子はこんなにも優しいのだろうか。
どうして人に対して優しくあれるんだろうか。
いい子すぎて、時々怖くなる。
いつか、人に対する優しさで自分を壊してしまう気がして――。
「秋斗さんは秋斗さんらしくいてください」
「……俺が俺らしくいると翠葉ちゃんが困ると思うんだけど」
俺らしいというのは、たぶん好き勝手やるっていうことのような気がする。
それ以外が思い浮かばないんだから、俺という人間は中身のない人間なのだろう。
「……では、私が記憶をなくす前の秋斗さんは私にどう接していたんですか? 私は、秋斗さんらしくない秋斗さんを好きになったんですか?」
正直、なんともいえない。


