「何を話してたの?」
「司先輩の恋愛話」
 答えると、先輩は咽こみ秋斗さんはフリーズした。
「……どうか、しましたか?」
 ふたりは顔を見合わせ表情を引きつらせる。
 そんなふたりを交互に見ていると、
「なんでもないよ」
「なんでもないから」
 秋斗さんと先輩は同じようなことを口にした。
 まるでふたりだけ意味を理解していて、私だけがわからない感じ。
「秋斗さんは司先輩の好きな人を知っているんですか?」
 秋斗さんは引きつる顔を押さえながら、「知ってるよ」と答えてくれた。
「どんな人ですか?」
「……そうだなぁ、すごくかわいくて、半端なく鈍い子だね」
 秋斗さんにも鈍いと言われてしまうのだ。これは相当苦労しているのかもしれない。
「先輩、がんばってくださいね」
 言うと、ふたりは再び固まった。
「……どうしたんですか?」
 訊くと、司先輩は立ち上がり、
「俺、もう帰るから」
 と、逃げるように部屋から出ていった。