彼女は外の景色が気になるようで、窓にぴたりとくっついている。
 見ているだけでいいのかな……。
 写真は……?
 そうは思うものの、まだ彼女と同じ空間にいたい自分はそれを切り出せずにいた。
「楓と紅葉(もみじ)って何が違うんでしょう……」
 彼女がポツリ、ともらした一言。
「紅葉(もみじ)と楓は植物分類上では区別されないんだ。どちらもカエデ科カエデ属。一般的には、カエデ属の中でとくにきれいな葉、小さく真っ赤に紅葉しているものを紅葉(もみじ)っていう。園芸上では葉の切れ込み数や切れ込み具合によってきちんと区別される。葉が五つ以上に切れ込みが入っているものを紅葉(もみじ)。切れ込みが三つ程度のものは楓」
「初めて知りました。秋斗さん、詳しいですね?」
「俺は草木について詳しいわけじゃないよ。ただ、楓って従弟がいるからね。真白さんや祖母に聞かされて育ったんだ」