若槻が手を加えたものとはいえ、開発者は俺だ。
 何をどうすれば解除できるのかなんて考えるよりも先に手が動く。
 そして、藤宮の施設におけるすべてのセキュリティにおいて、この携帯があれば解除できるようなシステムにしたのもほかでもない俺だ。
 中へ入ると、それなりの調度品が揃っていた。
 ほんのりと懐かしさを感じるような家具たち。
 UVカット仕様となれば、アンティーク家具の退色を低減させられる。
 暗くなってからオイルランプをつければそれらしい雰囲気になるだろう。
 建物には電気が通っていないわけではないが、室内には電化製品と思われるものは一切置かれていなかった。
「ベッドにソファセット、それからストーブね。これだけあれば確かに夜と朝の寒さも凌げるだろう」
 ストーブの上にはかわいいホーローのケトルが置いてある。