ここら辺は紅葉する木が少ない。が、パレスの周りは色づき始めたと木田さんから情報をもらっている。
「ここはまだみたいだけれど、もう少し奥まで行けば、多少は紅葉しているんじゃないかな」
「……きれいなところですね」
 そう言って彼女は窓から見える景色に釘付けになった。
 何もかもがあの日と同じ。
 つい、「あの日」を思い出してしまう自分がいる。
 そして、「あの日」について話を聞かせたいとも思う。
 でも、「今日」という日を大切に過ごしたいとも思う。
 過去の記憶とこれから作られる新しい出来事。
 比重の関係がわからない――。