「少し、楽になったみたいだな」
「……え?」
「今日、ここに来たときはすごくつらそうな顔してた」
「あ……心配かけてごめんなさい」
「……秋兄と付き合うって聞いた」
「……そうなの」
「……念願叶ったり、だろ? ならもっと嬉しそうにすればいいものを」
先輩は片膝を立て、その膝を両手で抱えている。さらにはその腕に顎を預けていた。
顔が傾いて見えるからか、いつもとは違う表情に見える。
相変わらずきれいで端整な顔をしているけれど、さらっと流れる黒髪がとくに美しい。
「嬉しいは嬉しいの……。でも、なんだか戸惑うことのほうが多くて」
「……嬉しいなら嬉しいで笑ってればいい。翠は笑っているほうがいい」
言われた言葉をそのまま受け取ってみたけれど、どこか腑に落ちなくて先輩の顔をじっと見てしまう。
すると、すぐに視線を逸らされた。……というよりは、顔ごと背けられた。
「先輩……?」
「……ってみんなが思ってる」
と、小さく付け足す。
なるほど……。
桃華さんにも湊先生にも蒼兄も、笑ってろと言われた気がする。秋斗さんにも笑っていてほしいと言われた。
私、そんなに笑っていないのかな――。
「……え?」
「今日、ここに来たときはすごくつらそうな顔してた」
「あ……心配かけてごめんなさい」
「……秋兄と付き合うって聞いた」
「……そうなの」
「……念願叶ったり、だろ? ならもっと嬉しそうにすればいいものを」
先輩は片膝を立て、その膝を両手で抱えている。さらにはその腕に顎を預けていた。
顔が傾いて見えるからか、いつもとは違う表情に見える。
相変わらずきれいで端整な顔をしているけれど、さらっと流れる黒髪がとくに美しい。
「嬉しいは嬉しいの……。でも、なんだか戸惑うことのほうが多くて」
「……嬉しいなら嬉しいで笑ってればいい。翠は笑っているほうがいい」
言われた言葉をそのまま受け取ってみたけれど、どこか腑に落ちなくて先輩の顔をじっと見てしまう。
すると、すぐに視線を逸らされた。……というよりは、顔ごと背けられた。
「先輩……?」
「……ってみんなが思ってる」
と、小さく付け足す。
なるほど……。
桃華さんにも湊先生にも蒼兄も、笑ってろと言われた気がする。秋斗さんにも笑っていてほしいと言われた。
私、そんなに笑っていないのかな――。


