「七時半前……」
 時計に目をやりジャケットを手に取る。
 まだ早いが下で待とう。
 時間が過ぎるのが遅すぎる。
 一分が六十秒という物理的な速度は変わらないはずなのに、いてもたってもいられないわけで……。
 車を取りに行くという口実くらいは残しておくべきだったかもしれない。
 今日の旅行はコンシェルジュも知っているため、出かける三十分前にはロータリーへ車を移動してくれている。
 一階に下りると、コンシェルジュ三人に迎えられた。
 その中の一人、崎本さんに「お早いですね」と笑顔を向けられる。