「俺はさ、茜に守られたことがあるみたいなんだよね」
 今、この人が話していることは俺が知らないことばかりだ。
「茜が体育館倉庫で男に襲われそうになって風紀委員が介入して助かったって話は知ってるでしょ?」
「はい、高一の秋頃の話でしたよね」
「あれ、茜が襲われそうになったのも事実だけど、ほかにも色々あってさ」
 ほか……?
 確かにあれは急なことで、風紀委員から生徒会や教師に報告が上がってくる間もなく、すべてが事後報告になったという異例な事態だったと聞いている。
 当時俺は中等部だったから、全く蚊帳の外だった。
 情報を仕入れてきたのは上との交流があった朝陽だ。