昨日の話だと、翠たちが藤倉を出るのは八時。
 見送りに行けないわけではないけれど、見送りに行くほどのことでもない。
 気にはなりつつも、俺は弓道場へと続く道を歩いていた。
 道場の前には人がひとり――。
「なんで会長がいるんですか?」
 しかも、こんな朝早く。
 今は六時を少し回ったくらいの時間で、生徒会の集まりは九時からのはず。
「おっはよー! いやさ、司が毎朝六時には道場に来てるって聞いてたしね。早く道場に入れてよ」
 俺がここに来るのは部活をするためであり、弓道部じゃない会長が何をしにここへ来たのかを知りたいわけなんだが……。
 それを訊くのは別に中に入ってからでもかまわないか。
 そう思い、道場の鍵を開けて中へ入る。