「俺は……体が起こせなくなるほど体調の悪い翠葉ちゃんも鈍感な翠葉ちゃんも、美味しい料理を作ってくれる翠葉ちゃんも、アンダンテのタルトが好きな翠葉ちゃんも、森林浴が好きな翠葉ちゃんも、カメラを持つと時間を忘れちゃう翠葉ちゃんも、俺の言葉に一挙一動してくれる翠葉ちゃんも、どんな翠葉ちゃんも好きなんだ」
 絶句していると、
「まだほかにもある。光を嬉しそうに見る翠葉ちゃんとか、髪の毛がきれいな翠葉ちゃんとか、無防備すぎる翠葉ちゃんとか、藤山で甘えてくれた翠葉ちゃんとか、いつも自分の体と闘っている翠葉ちゃんとか――」
「それ以上言わないでくださいっ……」
 聞いていて恥ずかしくなって、途中で口を挟んだ。
 寝ていると髪の毛で顔を隠せないから困る。だから、手で顔を覆った。
「これだけ伝えればわかってもらえる?」
 と、両手を取られ、
「もう一度言うよ。……少しでも俺が好きなら俺の側にいてくれない?」
 至近距離で目を合わせられる。
 その目は怖い目ではなく、とても真っ直ぐで誠実な目だった。
「――あの、ひとつだけ訂正してもいいですか?」
「……何?」
「…………少し、じゃなくて……すごく、です」
「……え?」
 取られた手を必死で顔に寄せる。