光のもとでⅠ

 司が歌を歌うとき、正座させて聴かせたほうがいいだろうか――真面目に悩む。
「じゃ、俺らがやってるのってまるで意味なし?」
 正直、拍子抜けっていうかやる前に気持ちが萎えそう。
 ここまでくると、手こずっている司を見れて面白いとかそういうのを通り越し、司が不憫に思えてくる。
「いや、藤宮先輩の気持ちには気づかなくても、御園生が藤宮先輩に惹かれるきっかけにはなり得るんじゃないでしょうかね?」
 佐野くんはどうしてこんなにも冷静なんだろうか。
「とりあえず、御園生の鈍さを利用しない手はないでしょう?」
 にこりと笑ったこいつは間違いなく悪魔だな。鬼だ。
「何なに、もうちょっとわかりやすくお兄さんに話してみなさいよ」
 そう言えば、佐野くんはにぃ~、っと笑った。
 出たな、悪ガキスマイル!