こういう顔を見たかった。
 こんな顔をしてもらいたかった。
 優太のことを春の陽射しみたいと言っていたけれど、俺にとっては翠がそういう存在なんだ。
「ツカサ……私にもツカサが必要だよ。ツカサがいないとすごく困る」
「…………」
「……どうしてそんなに驚いた顔をするの?」
「いや――」
 驚くなっていうほうが無理だと思う。
「今年の夏……私、ツカサがいなかったら乗り切れなかったと思うの。もしかしたら生きることを放棄していたかもしれない」
 っ――!?
「翠」
 そういうことだけは口にしてほしくない。
「わかってるよ。でもね、本当にそのくらいつらかったの。……今、こうしていられることが奇跡に思えるくらい」
 俺だって奇跡だと思ってる。