翠は食器棚からカップを取り出すと、コトリ、と小さな音を立ててポットの近くに置いた。
「ツカサ……私は必要な人かな」
 翠はカップを見たまま不安そうに口にした。
 まだ訊くか――そうは思うけど、こういうのにいちいち答えていくことに意味がある気がした。
「……翠がいないと困るって何度も言ったと思うけど」
「……本当に必要?」
「くどい。……でも、それを聞いて安心するなら何度でも言う」
 何度伝えても自信が持てないなら、不安になるたびに訊いてくれてかまわない。
 その都度、同じ答えを口にするまで。
「必要。少なくとも、俺の中では翠に代わる人間はいない」
 翠は一瞬だけ目を見開き、
「……ツカサ、ありがとう」
 と、頬を緩ませた。