光のもとでⅠ

 何か補足しろ、と文句を言おうとしたら、
「あ、でも――苗字ではなく名前を呼ばれると嬉しいと思うから……というのは私が、という話しなのだけど……。だから、誰かの名前を呼ぶときも、下の名前で呼べると嬉しいな。……呼べると嬉しいというよりは、下の名前を呼べる関係にあることが嬉しいと思う」
 どこか疑問文っぽいイントネーションで終わり、首を傾げてこちらを見る。
「じゃ、漣は?」
「サザナミくんは……苗字の響きがきれいだから」
 頭フル回転――そんな顔をしているけれど、俺が訊きたい答えまではまだ遠い。
「センリって響きもきれいだけど、周りの人でサザナミくんって呼んでいる人は少なくて、だから、自分が口にするだけでも新鮮な気がして……。きれいだから、そのままサザナミくんって呼びたかったの」
 翠らしいと思えた。
「ほかの男は?」
「……ほかの、男子?」
 俺が訊くことに対し、翠はいちいち驚き頭を抱えそうな勢いで悩み始める。