「翠葉ちゃんっ、大丈夫っ!?」
「あ……えと……」
 翠はラグの上に横になった状態で、言葉に詰まっていた。
「どうせ、段階も踏まずに立ち上がったんだろ」
 翠の手から携帯を取り上げ、今は俺の携帯に表示されることのないバイタルを見る。
 七十五の六十二――。
 脈圧はないものの、脈の乱れはそうひどいものではない。
 これなら数分も横になっていればもとに戻る。
「先輩、大丈夫です。あと数分もすれば落ち着くから。俺、飲み物淹れてきます」
 先輩に伝えるというよりは、翠に暗示をかけるために口にした。
 言葉による暗示や思い込みは人の身体にきちんと作用する。
 プラセボ効果は侮れない。