ゲストルームのインターホンを押したものの、なかなか出てくる気配がない。
 ゆっくり立ち上がったとして――立ちくらみ……翠ならあり得る。
 携帯をかければ近くから着信音が聞こえてくる。
 たぶん、すぐそこの自室にいる。
 携帯はつながったものの声が聞こえてこない。
「眩暈?」
『うん……ちょっとドジ踏んじゃった』
「じゃ、こっちで手動で開けるからいい」
 いつもと変わりなければ物理的な鍵はかかっておらず、指紋認証のみで開錠できるはず。
 右の人差し指をセンサー部分におくと、すぐにロックが解除された。
 玄関を開ければ翠の部屋は開いたままになっている。
「先輩、すぐそこ、左の部屋です」
 茜先輩はすぐに部屋へと駆け込んだ。