図書室に入ると朝陽に声をかけられた。
「司、秋斗先生がちょっと顔を出してほしいって言ってた」
「わかった」とは答えたものの、会いたくないと思う。
 この先の部屋に踏み込みたくない……。
 そうは思っても身体は着々と部屋の出入り口へ近づくし、右手でインターホンを押し、「司」と声を放つ。
 すぐにドアが開き、中へ入ると秋兄はデスク前でタイピング中だった。
 テクニカルキーの独特な音だけが鳴り響く部屋。
 数秒後、タン、とエンターキーを押したであろう小気味いい音と共に、秋兄の顔がこちらを向いた。
 夜通し仕事をしていた、そんな顔をしている。