口にした言葉は本音。
 翠は今にも泣きそうな顔をしていた。
 そんな顔をさせたいわけじゃないけど――今は無理。
 赤面じゃなくて、泣きそうな顔をしている翠に安心している自分がいるくらいには無理。
 夏休み、翠にはつらい期間だったかもしれない。けど、俺にとってはかけがえのない時間だった。
 あんなふうに側にいられたら、それで良かったんだ。
 それで良かったはずなんだ。
 なのに、今はその距離すら保てず話もできない。
 もう、あのときのあの位置にはもどれないのか――。