翠の顔を見る勇気はなかった。
 これで赤面されていたらかなりくる……。
 十カウント取られそうな打撃が。
「どっちにしろ、少し休んだほうがいいのは確か。でも、家や病院で横になってろっていう類でもない。だから、息抜きに行ってきたら? 白野は紅葉が始まってると思う。秋兄、仕事の都合は?」
 声を発すると同時に秋兄を振り向く。
 ただ、翠を視界に入れたくなかった。
「いや、明日は会議とかそういうものもないから大丈夫だけど……。でも、翠葉ちゃん大丈夫なの?」
「学校は楽しいみたいだけど、気苦労耐えないこともあるから。たまにはそういうのもいいんじゃないの? あとは相馬さんに訊いて。俺は帰る」
 紛れもなく自分が話しているはずなのに、現実味がまるでない。
「ツカサっ!?」
 つい――振り向いてしまった。
「少しは身体も頭も休ませろっ」